あれは四月の終わり ある休日
いつものようにいつもの友と遊ぶ俺
変わりのない一日が終わる頃
携帯から聞いたことのない暗い母の声
足早に家に帰り 病院へと向かう車の中
丸い月を見ながら母の言葉を思い出す
「父さんが倒れた」という悲痛な言葉を…
“生きる”こと ただひたすら“生きる”こと
親父は俺に教えてくれた
人を幸せにするということ
それは“生きる”ということなんだ
毎日のように親父のもとへ向かう俺を
幸せな奴等が我が物顔で邪魔をする
無数の管につながれた親父は
「僕に息子はいません」とDoctorに言った
自分の名前も忘れちまった 親父はいつも何か探してた
生と死の狭間に立たされながら
失くしてしまった たくさんの自分を取り戻すために…
“生きる”こと ただひたすら“生きる”こと
親父は俺に教えてくれた
人を幸せにするということ
それは“生きる”ということなんだ
家族のために休むことさえしなかった親父は あの日倒れた
理不尽な社会のルールに牙を剥くこともなく
じっとこらえて俺たちを守っていたんだろう
“生きる”こと ただひたすら“生きる”こと
親父は俺に教えてくれた
人を幸せにするということ
それは“生きる”ということなんだ
命、それは儚くて、いつの間にか消えゆくもの
だけど親父の命はこれからも輝き続ける
今宵も浮かぶあの丸い月のように
今も…
Copyright © 1999 MASATO ITANI